2024.10.11

「痛くない」インフルエンザワクチン|『フルミスト』とは?

「インフルエンザワクチン『フルミスト』は、痛くないって本当?」
「鼻の中にスプレーするだけで、本当に効果があるの?」
「従来の注射タイプと比べて、リスクはないの?」
など、新しいタイプの予防接種には、不安があるかもしれません。

今年から日本でも許可された、鼻の中にスプレーするタイプのインフルエンザワクチン『フルミスト』は、2003年にアメリカ、2011年にヨーロッパで認可され、2023年4月現在、36の国と地域で承認済のワクチンです。

本記事では、インフルエンザワクチン『フルミスト』の予防接種の特徴や効果、副反応などについて解説します。予防接種の種類を選ぶ際の参考にしてください。

目次

インフルエンザとは?

インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気です。
38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等の症状が比較的急速に現れるのが特徴です。
併せて普通の風邪と同じように、のどの痛み、鼻汁、咳等の症状も見られます。

発病後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には重症化し、肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。

インフルエンザはいつ流行する?

季節性インフルエンザは流行性があります。流行が始まると短期間に多くの人へ感染が拡がります。
日本では、例年12月〜3月頃に流行し、1月〜2月にピークを迎えることが多いです。12月中旬までにインフルエンザワクチンの接種を終えておくことが望まれます。

13歳以上の場合、1回の接種で十分な免疫が得られるとされていますが、13歳未満のお子様には、2〜4週間の間隔を空けて、2回の接種が推奨されています。
2回接種することで、ブースター効果が得られ、1回接種に比べてより強力な免疫が形成されると考えられています。

インフルエンザワクチンについて

ワクチンはインフルエンザを予防するのに、とても重要な対策の一つです。
インフルエンザワクチンは、「接種すればインフルエンザに絶対にかからない。」というものではありません。
しかし、インフルエンザの発病を予防することや、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされています。

6歳未満の小児を対象とした2015/16シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は60%と報告されています。

重症化を防ぐためにも、インフルエンザワクチンの接種による感染予防が重要です。

「痛くない」インフルエンザワクチン『フルミスト』について

『フルミスト』はインフルエンザウイルスを弱毒化した生ワクチンです。接種後に体の中で増えたワクチンウイルスに対する免疫ができ、インフルエンザウイルスの感染を予防します。

『フルミスト』の特徴・効果

・日本初となる、鼻へ噴霧するタイプの生ワクチン
・鼻の中へ噴霧するだけなので痛みがありません
・1回の接種で完了
・2〜18歳が対象

インフルエンザウイルスは主に鼻や気道の粘膜から感染します。

フルミストワクチンは鼻の粘膜に直接免疫を誘導するため、感染予防効果が高いとされています。
フルミストは点鼻後、弱毒化されたウイルスが鼻咽頭の粘膜に感染することで、血中にIgG抗体が作られるだけでなく、鼻や喉の粘膜表面にIgA抗体も生成されます。
IgG抗体は血液中でウイルスが侵入した際に中和する役割を果たしますが、粘膜表面には分泌されないため、ウイルスが鼻や咽喉の粘膜に付着した段階では十分な効果を発揮できません。
一方、IgA抗体は粘膜に分泌されるため、ウイルスが鼻腔内に入った際に粘膜で結合し、体内への侵入を防ぎます。
このため、フルミストは重症化を防ぐだけでなく、感染自体の予防にも効果的です。

さらに、生きたウイルスを利用して免疫を作るため、ウイルス株が異なっても感染後の重症化を抑える効果があります。
持続期間も長く、1シーズンを通して効果が維持され、注射ワクチンよりも長期的な免疫効果が得られる可能性があります。

また、米国ではフルミストの接種対象は49歳までとされていますが、過去にインフルエンザに感染したことがない子供に対して特に効果が高いため、日本では接種対象年齢が2歳以上19歳未満とされています。

『フルミスト』接種による副作用・副反応

10%以上
鼻閉・鼻漏(59.2%)、咳嗽、口腔咽頭痛、頭痛

1~10%未満
鼻咽頭痛、食欲減退、下痢、腹痛、発熱、活動性低下、疲労、無力症、筋肉痛、インフルエンザ

1%未満
発疹、鼻出血、胃腸炎、中耳炎

『フルミスト』が接種できない方

・明らかな発熱がある方
・重篤な急性疾患の方
・ゼラチン、鶏卵、鶏肉の摂取によるアナフィラキシーの既往がある方
・免疫機能に異常のある方、免疫抑制をきたす治療を受けている方
・妊娠中の方

『フルミスト』接種後の注意点

フルミストは経鼻投与の弱毒生ワクチンなので、投与後に軽い感染をおこした状態になります。
そのため、ワクチン接種後1~2週間は、飛沫や接触によりワクチンウイルスの水平伝播の可能性があるため、重度の免疫不全者と密接な関係を避けましょう。
また、ワクチン接種後一定期間は、本剤由来のワクチンウイルスがインフルエンザの迅速検査で陽性反応を示すことがあります。

『フルミスト』の接種費用目安

任意接種の場合、多くの医療機関で費用は8,000~9,000円程度かかります。
小さなお子さんが定期接種で2回受ける必要があることを考えると、選択肢の一つとして検討されるご家族も多いかもしれません。

監修医師

ことびあクリニック恵比寿院 
院長 金井 幸代(かない さちよ)

徳島県出身
平成9年 徳島大学医学部 卒業
学位:医学博士
専門:日本小児科学会 小児科専門医
所属学会:日本小児科学会/日本外来小児科学会/日本小児アレルギー学会